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連載:地球温暖化の「今」と21世紀

地球温暖化の「今」と21世紀(8)

2015/1/1

「氷」の減少がもたらすもの

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書には「雪氷圏」という項目があり、その変化について、次のように概括されています。

過去20年にわたり、グリーンランド及び南極の氷床の質量は減少しており、
氷河はほぼ世界中で縮小し続けている。

(気象庁訳:「IPCC気候変動2013」(PDF)p.7より)

雪氷圏」には、海氷・氷河・氷床・永久凍土・積雪などがありますが、今回は、そのうちの氷河氷床について、書いていこうと思います。

ところで、「氷河」は馴染みのある言葉ですが、「氷床」という言葉はあまり耳にすることがありませんね。

氷床」とは、5万km²以上の面積をもつ氷塊のことです。
地球上では、グリーンランド南極大陸の2ケ所に残っています。
(氷床の周囲には氷河もありますが、IPCCでは、これらの氷河は「氷河」としてではなく「氷床」として扱っています。)

温暖化による氷河氷床の減少は、地球にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?

氷河・氷床の減少による海面水位の上昇

最大のものは、海面水位の上昇です。

実は、海面水位上昇の一番大きな原因は、温暖化による海水の膨張(約40%)なのです。
海水の熱膨張が海面を押し上げる傾向は、今後も同様に続くと言われています。
次いで氷河の変化(約30%)、そして氷床の変化(約20%)です。
(海に浮かぶ海氷は、融けても体積が減りますから、海面水位の上昇には殆ど影響ありません。)

下のグラフは、氷河と氷床の減少の様子を示したものです。

氷河と氷床の減少の様子

出典:環境省『IPCC第5次評価報告書の概要』(PDF)p.22

このグラフを見ると、近年になるほど、氷床損失量の増え方の勢いが増していることが分かります。

氷床にある氷の量は膨大です。地球上の氷の90%南極氷床9%グリーンランド氷床が占めていて、氷河の占める割合は1%にも満たないのです。21世紀以降の海面水位に、この二つの氷床が一層大きな影響を及ぼすことは必至です。

では、IPCCの報告を基にしながら、もう少し詳しく、氷床について見てみましょう。

グリーンランド氷床は、消失する運命にあるのか?

IPCCの報告書の末尾に、ちょっと気になる表現があります。引用しましょう。

あるしきい値を超える気温上昇が持続すると、千年あるいはさらに長期間をかけたグリーンランド氷床のほぼ完全な損失を招いて、7mに達する世界平均海面上昇をもたらすだろうということの確信度は高い。現在の見積もりでは、そのしきい値は工業化以前に対する世界平均気温の上昇量で約1℃より大きく、約4℃より小さいとされている。

(気象庁訳『気候変動2013』p.27より )

「しきい値」とは、それを境にして反応が変わる値のことです。
つまり、産業革命時点から1℃~4℃の気温上昇で、グリーンランド氷床は、全てなくなるまで融解し続ける状態に入る、というのです。そして、それによって海面は今より7mも上昇するのです。
19世紀末以降、0.85℃の平均気温の上昇が確認されていますから、その「しきい値」は間近かもしれません。7mという海面上昇は想像することもできませんが、一刻の猶予もない状況にあるようです。

西南極氷床の危機

グリーンランド氷床がそんな状態だったら、南極氷床はどうなんだろう? と思いますね。

南極氷床が全部融けると、海面は60m以上上昇することが分かっています。
60m!!・・・・・「天文学的」な数字です。

IPCCの報告書から、南極氷床に関する部分を引用します。

南極氷床の海洋を基部とする部分の気候強制力に対する不安定性により、
急激かつ不可逆的な氷の損失が起こる可能性があるが、
現在の証拠と理解は定量的な評価を行うには不十分である。

(気象庁訳『気候変動2013』p.27より )

「現在の証拠と理解は定量的な評価を行うのには不十分」だから21世紀中には壊滅的な変化は起こらないのだろう・・・・と思いたいのですが、どうも、そうではないようです。

南極についても、今年の5月以降、アメリカのNASA(米国航空宇宙局)やワシントン大学の研究グループなどから衝撃的な報告がされているのです。

南極西部氷河の急速な融解が始まり、限界点を超えた、という報告です。
西南極氷床は、その沿岸部が氷河となって海底にまで達し、海底で固定されていました。
沿岸氷河が海底に結合した状態にあるので、氷床は海に流れ込まないで安定している、と考えられてきたのです。

ところが近年、海水温の上昇によって沿岸氷河が浸食されていることが分かってきたのです。

南極の氷床が溶けるメカニズム

出典 http://matome.naver.jp/odai/2139995606397249401

沿岸氷河が侵食されると、氷河は、上の図のように海底から遊離して海に浮かび出し、融解速度を上げていきます。沿岸氷河の融解は、やがて、西南極氷床に連動し、その崩壊を引き起こします。
多くの科学者が、西南極氷河の崩壊は避けられない所まできてしまった、と見ているのです。

では一体、この西南極氷床の崩壊は、海面水位にどれ位の影響を与えるのでしょうか?

西南極氷床全体の融解には200年~1000年くらいかかり、海面水位は4~5m上昇するだろう。
西南極氷床の崩壊で、2100年時点の海面水位は、28cm~100cm位上昇するだろう。
と、何人もの科学者が考えています。

実は、こうした西南極氷床の変化は、今回のIPCCの報告には反映されていないのです。
(IPCC第1作業部会の報告書は昨年9月に公表されたものです。)IPCC報告では、2100年時点の海面水位は、最小でも今より26cm上昇し、最悪の場合には82cm上昇すると予想されています。

ですから、西南極氷床の崩壊が加わると21世紀末には、最悪で2m近く海面が上昇することになります。
たいへんな事態になりそうです。果たして、人類はこの事態に対応しきれるのでしょうか?

去る14日、COP20が閉幕しました。来年のCOP21に向けて、大胆な決断が求められています。

(文責 副理事長・吉田雅人)

 
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