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連載:地球温暖化の「今」と21世紀

地球温暖化の今と21世紀(33)

IPCC「1.5℃特別報告」が示したこと

去る10月8日、国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、「1.5℃の地球温暖化」という特別報告書を発表しました。
195ケ国が加盟するIPCCは、各国の科学者らが気候変動に関わる科学的な研究を収集・評価するための国連組織です。1990年以降、数年ごとに膨大な報告書を発表してきました。そして来年には「第6次報告書」が予定されていますが、今回はそれに先立ち、「1.5℃特別報告」として1000ページを超える文書を発表したのです。
これは、2015年に採択されたパリ協定を受けたものです。
パリ協定では、世界平均気温の上昇を産業革命前と比べて2度未満に抑え、更に1.5度未満に抑える努力をする、という目標が明記されたからです。

では、「1.5℃特別報告」では、どのような報告がされたのでしょう?
幸い「政策決定者向け要約(SPM)の概要」(以下「要約概要」)を環境省が和訳し、HPに掲載されていますので、新聞等の報道と合わせて、そのポイントをまとめてみようと思います。

政策決定者向け要約の概要 http://www.env.go.jp/press/files/jp/110087.pdf

「1.5度」目標に対しての現状 

報告書は先ず、2017年段階で、産業革命前から「約1℃」温暖化が進行したと推測しています。
さらに、地球温暖化が現在のテンポで続けば、「2030年から2052年の間に1.5℃に達する可能性が高い」とも指摘しました。(英文の「報告書」に使われているグラフ)

1.5℃特別報告より

IPCC Global Warming of 1.5℃

2013年に発表された「第5次報告書」では、「1880年から2012年の期間に0.85℃上昇」した、とされていましたから、この5年間で世界の平均気温が「0.15℃」も上がったことになります。これは驚異です。
英文本文の中に、目を引いた資料がありました。下の地図です。

1.5℃特別報告より

IPCC Global Warming of 1.5℃

産業革命前からの気温上昇を、地域別に示したものです。
ご覧のように、気温上昇が最も極端に進んでいるのが北極圏です。
年間の平均で3℃以上も上昇した地域が広がっています。
また、冬の気温に至っては、ほぼ北極圏全域で3℃以上の上昇が起きていることも分かります。

実は、5年前の「第5次報告書」にある同じ趣旨の地図では、北極圏はほぼ全域が「白色」で表示されていたのです。
つまり、当時はIPCCでも、北極圏について、「有効で確実な推定が可能」なデータが揃っていなかったのです。
それが今回は、推定が「確実」になり、しかも、気温上昇が極めて激しいことがはっきりしたのです。
北極圏の急激な温暖化は、地球全体の気候に大きな異変をもたらします。
今年、世界各地を席捲した「異常気象」の背景である温暖化が、ここまで来てしまっていることを強く認識する必要があるでしょう。

こうした現状ですから、「要約概要」は、これまでに人間が排出した量だけでも「地球温暖化は、数百年から数千年にわたって継続し」「気候システムにおけるさらなる長期的変化(例えば海面水位の上昇など)を継続的に引き起こす」と指摘しています。私たちが、今、どんなに努力をしても、温暖化は、数百年から数千年にわたって地球環境の変化を引き起こし続けるのです。

1.5℃上昇」した場合と、「2℃上昇」した場合の違い

「要約概要」では、気温上昇の違いによって、地球環境にもたらされる影響がどのように違うのか、5項目に分けて紹介されています。

(1)極端現象(異常気象)
「要約概要」では、異常高温、いくつかの地域での降水量の増大、いくつかの地域での干ばつと降水不足の増加など、「1.5℃」より「2℃」の方が多くなると予測しています。

(2)海面水位の上昇
2100年までの海面水位の上昇は、「1.5℃」の方が、「2℃」より「10cm低い」と予想。
被害を受ける人も、1000万人少なくなると推計しています。
さらに、この海面水位は長期に及び「2100年のはるか先も継続」する、と指摘しています。
海水面上昇の最も大きな原因は海水の膨張によるものです。
氷河や氷床が融解して海に流出する影響より、海水の膨張による方が大きいのです。
1971年から2010年までに海に蓄積されたエネルギーは、その期間の全エネルギーの90%とされています。
ですから、仮に気温上昇が止まったとしても、海水面ははるか先まで上昇を続けることになるのです。

(3)生態系への影響
昆虫や植物や脊椎動物の生息域の消滅が、「2℃」では「1.5℃」の2倍以上に広がります。
サンゴ礁の生息域は、「2℃」ではほぼ消滅します。
深刻な事に、「1.5℃」でも70%~90%の生息域が消滅すると報告されています。
このままでは、今世紀中にサンゴ礁が形成されなくなってしまいます。
サンゴ礁は海の生態系に重要な役割を果たしていますから、このことは大変大きな意味を持ってきます。

(4)海水温の上昇と海洋酸性化
(5)健康、生計、食料、水供給、安全保障、経済成長への影響  (4)(5)は省略します。

「1.5℃」に整合する世界全体による対応

こうした内容から分かるように、「1.5℃」でさえ、深刻な影響が生じるのです。「2℃」では、さらに危機的な状況を招きます。すでに「1℃」の上昇が起きてしまっているのですから、「1.5℃」まで、我々に残された猶予は、わずか「0.5℃」です。

「要約概要」では、「1.5℃」未満に抑えるには、「人為的なCO2排出量が、2030年までに、2010年水準から約45%減少し、2050年前後に正味ゼロに達する」ことが必要だと指摘しています。今回の「特別報告書」には、世界の電源構成で再生エネルギーの割合を70%~85%にすることや、排出量の大きい石炭火力発電をゼロにすることなども盛り込まれました。

日本では、2030年の排出削減目標が「2013年比26%削減」のまま。再生可能エネルギーも10%台です。
この間、九州電力が太陽光発電を停止した措置も、原発優先のためでした。
これでは、「1.5℃」に見合った数字でないだけではなく、世界の「笑い者」です。
温暖化対策の抜本的な強化が求められています。

(文責 副理事長・吉田雅人)

 
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