環境美術館
星空
特定非営利活動法人
JGK埼玉グリーンプラ事務局
〒331-0054
さいたま市西区島根634番地
TEL:048-623-4063
FAX:048-622-4724
jgk@saitama-greenpla.org
グリーンケロックン
イメージキャラクター
「グリーンケロックン」

連載:地球温暖化の「今」と21世紀

地球温暖化の今と21世紀(28)

過去最大規模・1兆トンの氷塊が氷山化!

ラーセンC棚氷

ついに、南極第4の大きさの棚氷(たなごおり)である「ラーセンC棚氷」が崩壊し始めました。
これは、去る7月12日、ラーセンC棚氷の観察を続けてきた研究プロジェクト「MIDAS」の発表によるものです。

ラーセン棚氷は、南極の最北部の南極半島にあり、その北には南アメリカ大陸最南端部があります。
南極の地図(左)を参照して下さい。

ところで、「棚氷」って何?と思われる方も多いでしょう。

南極大陸を覆う氷床(ひょうしょう・大陸を覆う氷塊)は、氷河となって海に注ぎ込んでいます。
この氷河の末端で、海に張り出して浮かんでいる部分を「棚氷」と言います。
ですから、棚氷が崩壊すると氷山ができます。今回の崩壊でできた氷山は、過去最大級の約5000k㎡。
これは、千葉県や愛知県の面積に相当し、航海中の船舶にも、危険が及ぶのではないかとも言われています。

下の画像は、ラーセンC棚氷のヒビが最長に及んだ時のもの。この直後に、崩壊が起きたのです。

ラーセンC棚氷崩壊

(上の画像は「GIGAZINE」HPより)

棚氷の崩壊は、氷河の流れを加速する

ところで、南極大陸の棚氷は、氷河が海に流れ出すのを、抑止する働きも持っています。
氷河は、氷と岩との摩擦だけでなく、海から棚氷に力が加えられることで安定が保たれています。
ですから、棚氷が崩壊すると氷河の流れが速くなり、不安定になります。
下の画像で、棚氷氷河の関係をご覧ください。
(画像はウィキペディアより・赤字の日本語は筆者の加筆による)

氷河と棚氷1

氷河と棚氷2

棚氷はもともと海に浮かんでいるので、崩壊しても海水面は殆ど上がることはありませんが、氷河が海に流れ出ると、海水面は上昇します。

南極の氷が全部解けると、海水面は約60m上がることが分かっています。
このラーセン棚氷のある西(にし)南極氷床の面積は、フランス国土の約2倍。
この氷床全体の崩壊は、もはや避けられないだろうと言われていますが、仮に西南極の氷のすべてが海に流れ出すと、世界の海水面は3.3m上昇すると言われています。

そこまでにあと何十年、何百年の猶予があるのか定かではありませんが、グリーンランド等の氷の融解と合わせると、今世紀末には、今より2m近く海水面が上昇する、という見解が真実味を増しているようです。

「東(ひがし)南極氷床」の不気味さ

近年、科学技術の発展により、少しずつ南極の氷の実態が分かってきています。

棚氷の崩壊は、暖かい空気と、北からの暖かい海水によって引き起こされています。
氷の融解が進んでいる西(にし)南極の中でも、ラーセン棚氷のある南極半島は、温暖化の影響が最も顕著に表れた地域と言われ、平均気温は1950年より2.5℃も上昇。世界平均の数倍も、温暖化が進んでいるのです。

また、海水による氷の浸食は、さらに大きな危険を生み出しているかもしれないのです。
それは、これまで安定していると考えられてきた東(ひがし)南極氷床への影響です。

レーダー観測によって、東南極の陸地には氷河に削られた谷がいくつもあり、その谷底は深い所で最大2600mにも達していることが分かってきました。棚氷を解かした海水が、陸地部分にまで及べば、暖かい海水は、その谷を通って氷床の中央部まで入り込むことができるのです。
こうなると、世界の海水面の上昇は一層激しく進行することになるでしょう。

今、古気候学によって、不気味な事実が分かってきています。
約300万年前の大気のCO2濃度は現在と同程度でした。そして、その時の気温も、2050年の予測値とほぼ同じです。ここまでは、「なるほど」なのです。しかし、この時代の海水面は、今より21mも高かったのです。

なぜ、現代とCO2濃度も気温も同じなのに、海水面は21mも高かったのでしょう?
グリーンランドの氷が全部解けても、海水面の上昇は7mですから、21mには達しません。
では一体、300万年前の海水面の高さは、何によって説明できるのでしょう?
考えたくないのですが、地球の氷の80%近くが存在する東南極の融解、という事態も視野に入れる必要があるようです。
海水の温度は、気温上昇が止まっても上がり続けます。パリ協定で決まった「2℃~1.5℃目標」の達成は一刻の猶予もならない課題だと言えるでしょう。

(文責 副理事長・吉田雅人)

 
↑このページの先頭へ
Copyright © JGK Saitama-Greenpla