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連載:地球温暖化の「今」と21世紀

地球温暖化の今と21世紀(15)

「2℃未満」目標を達成するには

6月30日、温室効果ガス排出量が世界第一位で排出量全体の約4分の1を占める中国や、排出量世界第7位の韓国などが、2030年までのCO2削減目標を国連に提出しました。

中国は、国内総生産(GDP)当たりのCO2排出量を、2005年比で60~65%削減、
韓国は特別な措置をとらなかった場合の予測排出量に比べて、37%削減、

という内容です。

両国の目標値には、アンダーラインを付したように、「国内総生産(GDP)当たり」とか、「特別な措置をとらなかった場合の予測排出量に比べて」という前提があります。
この「前提」についてはあとで触れますが、5カ月後に迫ったCOP21気候変動枠組条約締約国会議)に向けて、7月13日現在、45カ国(アメリカ、ロシア、スイス、ノルウェー、メキシコ、ガボン、リヒテンシュタイン、アンドラ、カナダ、モロッコ、エリオピア、セルビア、アイスランド、中国、韓国、シンガポール、ニュージーランド、EU=28カ国)から削減目標が提出されています。
(日本は、7月中旬頃に提出するだろうと言われています)

かつてない多くの国から削減目標が提出されていますが、
では一体、「産業革命以前からの気温上昇を2℃未満に抑える」という世界の目標に足りるものになっているのでしょうか?

IPCC報告書は、近年の主要国「削減目標」をどう見ているか

国際世論に強い影響を与えているIPCC第5次評価報告書には、
近年に世界主要国が掲げた削減目標について、次のような指摘がされています。

  • カンクン合意に基づく2020年の排出量は、産業革命以前からの気温上昇を2℃未満に抑える可能性が少なくとも「どちらも同程度」のシナリオ(約450、500ppm)を費用効果的に達成する経路から外れている。ただし、2℃抑制目標を達成する可能性を排除するものではない。
  • これらの目標を達成するには、2020年以降にさらに大幅な削減が必要となるであろう。
  • カンクン合意は、気温上昇を3℃未満に抑える可能性が高いシナリオを費用効果的に達成する経路に概ね一致する。

IPCC第五次評価報告書の概要ー第3作業部会ー p.23より
        http://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg3_overview_presentation.pdf(PDF)

おおまかに言えば、「カンクン合意(2010年)」の各国目標では、産業革命以前からの気温上昇が3℃にまで達する危険性があるのです。「カンクン合意」レベルでは、「2℃目標」の達成はかなり困難で、2020年以降の大幅な削減が必要になるということです。

では、2010年の「カンクン合意」にある各国の「削減目標」とは、どんなものだったのでしょう。

カンクン合意・・・2020年までの主要排出国の削減目標

京都議定書第一約束期間(2008年~2012年)以降を決める国際交渉は、「先進国」と「途上国」の対立などの大きな困難を抱えながら進められてきました。
そうした経過の中で、2010年のCOP16でなされた合意が「カンクン合意」です。
(カンクン合意には法的拘束力はありません)

産業革命以前に比べて気温上昇を2℃未満に抑える」という国際目標も、ここで合意された内容の一つ。
また、「先進国」の削減目標だけでなく、「途上国」の削減行動も含めて、主要排出国から自主的に2020年迄の削減目標が出され、合意されたのも、「カンクン合意」の重要な成果です。
つまり、「途上国」の削減行動もリスト化され、その「行動」が検証できるように「見える化」することが謳われたのです。このことは、その後の国際交渉を進める上で、たいへん重要な意味を持っています。

カンクン合意で示された主要国の削減目標は以下の通りです。

削減目標・行動の状況

出典:衆議院調査局環境調査室「地球温暖化対策」(平成22年3月)

上の資料では、気候変動枠組条約で分類された「先進国」と「途上国(新興国)」が色分けしてあります。
青色の地で示された「先進国」の削減目標の下には、(1990年比)(2005年比)と記されていますが、これは、削減率の基準となる年を表わしています。
また、オレンジ色の地で示された「途上国(新興国)」の削減目標の下にある(BAU比)という言葉は、
現状に対して何も対策を取らなかった場合に予測される排出量と比較した時の割合を示し、(GDP当たり)という言葉は、国内総生産に対する割合を示しています。

でも、なぜ、「先進国」と「途上国(新興国)」の削減目標の基準の置き方が異なるのでしょう?

国際間の温暖化対策の交渉は、「気候変動枠組条約」に基づいて行われます。
この条約では、温室効果ガスを排出し累積させてきた「先進国」と、「途上国」の責任を区別しています。それが、「共通だが差異のある責任」なのです。

ですから、これまでCO2削減は、先進国だけが果たすべき課題でした。
しかし、一方で、中国・インド・韓国などの「途上国」でも経済発展が進み、多くのCO2を排出するようになってきました。こうした経過の中で、「途上国」の削減行動を含めた、カンクン合意が生まれたのです。

「途上国」の「削減目標」の設定方法が「先進国」と異なるのもこのためです。

カンクン合意から更なる前進が必要

カンクン合意は重要な内容を持ちますが、IPCCの報告書にもあったように、そのレベルでは「2℃未満目標」の達成は困難です。

カンクン合意を土台にして、IPCCの科学が示したレベルにまで、何としても国際交渉を前進させる必要があります。ですから、今年の11月~12月にかけて開催されるCOP21迄に、主要排出国がどれだけ野心的な削減目標を提示するのかが問われているのです。

参考までに、主要国について、カンクン合意で示された目標値と、今回提出されている目標値を比べてみました。(日本は政府案・7月15日時点)

CO2削減目標の比較

国際NGO(非政府諸組織)などによると、まだ削減幅が不足しているとのこと。
これからの5カ月間で、現在提出されている数値をどこまで上乗せしていけるのか、注目していく必要があります。

しかし、こうして他国と比べてみると、我が国の目標の不十分性は否めません。

先ず、カンクン合意で提出した削減目標を、2013年に取り下げたことが上げられます。
民主党鳩山政権の時に掲げた「1990年比で2020年までに25%削減」を、
2005年比で2020年までに3.8%削減」にまでダウンさせたことです。

更に、今政府が提出しようとしている目標(案)の低さです。
基準年を「2013年」(史上2番目に多く排出した年)としただけでなく、その目標(案)は、京都議定書批准国が基準年としている「1990年」で換算すると、わずか18%

温室効果ガスの削減目標は、一国の目標であっても、世界中の納得が必要な数値です。
当然だと思います。
地球の在り方を決定づける目標だからです。
一国ごとの政策を集約した結果が、地球全体の運命を方向づけるものになるからです。

日本の削減目標が引き上げられ、世界中が力を合わせて「2℃」目標を達成できるよう、更なる努力を期待したいと思います。

(文責 副理事長・吉田雅人)

 
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