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連載:地球温暖化の「今」と21世紀

地球温暖化の今と21世紀(12)

2015/5/1

日本の自然への影響

地球「温暖化」が進むことで被害を受けるのは、私達人間だけではありません。
自然生態系は、人間以上の被害を受けることになります。

IPCCの報告書(第2作業部会)には、次のようなショッキングな記述があります。
(正確さを期すため、翻訳原文のまま引用します)

多くの種は、中~高の範囲の気候の変化速度(すなわち、RCP4.5、6.0及び8.5)下において、
21世紀中には生息に適切な気候を追従できないだろう。

 「気候変動2014 影響、適応及び脆弱性」環境省訳(PDF)  p.16より

では、日本の自然生態系はどうなるのでしょう?
IPCCの報告書には、直接日本に関連した記述はありません。
そこで、昨年3月に環境省が発表した「地球温暖化『日本への影響』」を見てみることにしましょう。

http://www.nies.go.jp/whatsnew/2014/20140317/20140317-3.pdf

残念ながら、自然生態系全般が見通せる研究成果は掲載されていませんが、
代表的な樹木(ハイマツシラビソブナアカガシ)に与える影響については、予測が発表されています。

その中から、ハイマツブナを紹介します。
現在を元にして、2081年~2100年の「潜在生育域」(生育可能な地域)の割合を、
RCP2.5とRCP8.5のシナリオで予測したグラフです。(p.7の記載をもとに、筆者が作成)

ハイマツとブナの潜在育成域の予測

ハイマツは、高山帯に優占する針葉樹。
気温や強風等のため、地面に這うように生えます。

ブナは、冷温帯の代表的な落葉広葉樹。
白神山地は、世界有数のブナ林で知られます。

*青色で示したハイマツから見てみましょう。

最も「温暖化」を抑えたRCP2.6の場合でも、21世紀末の「潜在生育域」は現在の16.5%
このまま「温暖化」が進むRCP8.5の場合には、ほぼ絶滅することが分かります。

このことは、高山帯の生態系にどんな影響を与えるのでしょうか?

(下の写真は筆者の撮ったチングルマのお花畑)

チングルマのお花畑

ハイマツは「温暖化」から逃げ、
高度を上げて生き延びようとします。
すると、ハイマツより標高の高いエリアに生きてきた高山植物と競合します。
氷河期以来、生き延びてきた高山植物達は、
ハイマツとの競合によって、「温暖化」によるリスクが一層深刻なものになります。
こう考えてゆくと、RCP2.6シナリオの場合でさえ、日本の高山植物の運命は危機的であることが分かるのではないかと思います。

更に、ハイマツの後退は、そこに棲む動物にも影響を与えます。
とりわけ、大きな影響を被るのが雷鳥です。

(下の2枚は、白馬岳で筆者が撮った雷鳥親子の写真)
雷鳥親子の写真

今でも絶滅が危惧されている雷鳥は、おもにハイマツの中に営巣しています。
子育て期間の夏には、ハイマツの中から出てきて草の実をついばむ親子に出会うこともあります。
標高3000m近い高山で、こんな様子に出会うと、本当に自然の素晴らしさに感動します。

ハイマツは間違いなく、21世紀末には絶滅に近い状態になるでしょう。
そのことは、21世紀には、高山植物のお花畑も、雷鳥達も、この日本から姿を消してしまう危険性をも教えているのです。

*もう一つのブナを見てみましょう。

ブナの「潜在生育域」は、RCP2.6では拡大し、
最悪のシナリオRCP8.5では、現在の約4分の1に減少すると予測されています。

「4分の1だから、ハイマツよりはましだ」と思われる方も多いでしょう。

しかし、ブナにはブナの事情があるのです。
前掲の「地球温暖化『日本への影響』」には、こんな記述があります。(p.7より抜粋)

北海道では、潜在生育域がRCP2.6と4.5で拡大をするが、移動速度が23km/100年以下と遅いため、分布はほとんど拡大しないと考えられる。

つまり、生育可能なエリアは現在の4分の1になっても、実際にブナが生育するエリアは、
もっと少ないというのです。
そのことも含めて、分かりやすく示したのが下の図です。

(出典:FuntoShareウェブサイトhttp://funtoshare.env.go.jp/ipcc-report/climateChange/wg2.html )

ブナの成育可能域の予測

ブナは保水力が高く、大型動物の棲みかとしても貴重な環境となっています。
白神山地には、ツキノワグマだけでなく、ニホンカモシカクマゲライヌワシなどの絶滅危惧種が生息しています。このままの「温暖化」が進むと、今世紀中には、こうした動物達も絶滅に追いやられる危険性があるのです。

「温暖化」の影響は、人間社会よりも動植物に先ず現れます。
そしてそのリスクは、人間よりもはるかに高いのです。
難しい課題なだけに、自然生態系への一層の研究と対策が急がれます。

(文責 副理事長・吉田雅人)

 
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