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連載:地球温暖化の「今」と21世紀

地球温暖化の今と21世紀(11)

2015/4/1

自然生態系への影響

地球「温暖化」は、動植物に深刻な影響を与え、多くの生き物たちが「絶滅」のリスクに直面します。
そして、その責任は、私達「人類」にあるのです。
私達は、地球上の生き物達にも想いを巡らせる必要があります。

そこで今回は、陸上と淡水の生態系に関するIPCCの指摘をお伝えしたいと思います。

地球規模の変化

IPCCの報告書(第2作業部会)には、次のようなショッキングな記述があります。
(正確さを期すため、翻訳原文のまま引用します)

多くの種は、中~高の範囲の気候の変化速度(すなわち、RCP4.5、6.0及び8.5)下において、
21世紀中には生息に適切な気候を追従できないだろう。

 「気候変動2014 影響、適応及び脆弱性」環境省訳(PDF)  p.16より

つまり、温暖化ガスの排出が今のままで増え続く場合(RCP8.5)だけでなく、
中程度の排出削減努力をした場合(RCP4.5、6.0)でも、その気候変動の速さのために、
多くの動植物は、21世紀中に、生息に適した気候に適応してゆくことができなくなるだろう、というのです。

IPCCの報告書には、この指摘を裏付ける興味深い図表があります。
種の移動の最大速度」と、21世紀後半に予測される平均気候速度」を、同じたて軸に表した図表です。


図:予測された気候速度と種ごとの最大移動速度

環境省作成・プレゼン用資料(PDF)p.31から切り抜いて作成。

この表の見方を下に示しますので、参考にして下さい。

「気候速度」について
「気候速度」とは温暖化が進むことで年間平均気温の等温線が水平方向に移動してゆく速度。
「気候速度」は、山地では遅くなり、平地では速くなる。近年、注目を集めてきている概念。

「世界平均」は陸域の平均値。「平地」は大規模な平地での値。

  • 「RCP8.5」は、今のままで「温暖化」が進んだ場合に予測される気候速度。
  • 「RCP2.5」は、最も「温暖化」を抑えた場合に予測される気候速度。
  • 「RCP6.0」「RCP4.5」は、その中間の場合の予測。
  • 「世界平均」は陸域の平均値。「平地」は大規模な平地での値。

黒棒と黒棒のある白いボックスに関して

  • 黒棒は、各生物の最大移動速度の中央値。
    (中央値:集計した全ての種の中央に位置する種の最大移動速度)。
  • 白いボックスは、それぞれの最大移動速度の範囲。

*各水平線より下に最大移動速度が示される種は、そのままだと生き延びることが難しいと、予測される。

キリンやシカたちの運命は?

この図表で、「平地」に棲む「偶蹄類」を例にとって考えてみましょう。

「偶蹄類」は、ひづめが2つに分かれ、草原で暮らすのに適応した草食動物です。
シカ、キリン、イノシシ、ラクダ、ウシなど、地球には185種が生息しています。

最大移動速度は、他の生物に比べてとても大きいですね。
その中央値は、10年間で約90km。
最も遅い種でも、その最大移動速度は10年間で約30kmです。
多くの種が、RCP8.5の平均気候速度にも対応できる速度で移動できそうです。

では最大移動速度だけで、21世紀後半に生き残れる、と考えて良いのでしょうか?
それはです。

「偶蹄類」は草食動物ですから、草本植物がなければ絶滅する筈です。
上の図表で「草本」の最大移動速度を見てみると・・・・・・。
中央値は殆ど0km。
最大の種でも、10年間で約30km。
しかも、大多数の草本類は、「中央値0km」に近い速度です。

平地の温暖化が、RCP8.5のシナリオ通りに進むと、草本類の殆どは絶滅します。
全ての偶蹄類が最大移動速度で移動しても、そこには肝心のエサがないのです。

つまり、偶蹄類は草本植物の移動範囲でしか、生き延びることができないのです。

こうした食物連鎖も前提にして改めて上の図表を見ると、
「温暖化」が自然生態系に与えるリスクの大きさが、よりはっきりと分かってきます。

「多くの種は、中~高の範囲の気候の変化速度(すなわち、RCP4.5、6.0及び8.5)下において、
21世紀中には生息に適切な気候を追従できないだろう。」

というIPCCの指摘は、決して大袈裟な表現ではないのです。

「温暖化」の影響は、人間社会よりも動植物に先ず現れます。
そしてそのリスクは、人間よりもはるかに高いのです。
難しい課題なだけに、自然生態系への一層の研究と対策が急がれます。
(次回は「日本の自然生態系」を扱う予定です。)

(文責 副理事長・吉田雅人)

 
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