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連載:地球温暖化の「今」と21世紀

地球温暖化の「今」と21世紀(10)

2015/3/1

気候変動にどう立ち向かうのか

昨年5月以降毎月、この連載では、おもにIPCC気候変動に関する政府間パネル)第5次評価報告書の第1作業部会自然科学的根拠)について、なるべく分かりやすく書いてきました。

上がり続ける気温と海洋温度。
止まるところを知らぬ海面水位の上昇。
熱波や大雨など、世界各地で頻発する気候の極端現象。
雪氷の融解と崩落。
・・・・・・・・・

自然科学の最新情報を知ると、ともすると、
絶望的な気持ちに捉われてしまいます。

しかし、子供や孫たちの時代、そして人類と地球環境の長い将来をきちんと考え、
「気候変動」に、しっかりした対応をしてゆくことは、今を生きる私達の世代の責任でもあります。

そのためにも、気候変動に関する科学的な知見をふまえた上で、今求められている地球レベルでの対応策を知り、私達の日常生活を再考してゆく必要があるのだと思います。

そこで今回からは、IPCC
第2作業部会影響、適応、及び脆弱性)、第3作業部会気候変動の緩和)、統合報告書の内容について書いていきたいと思います。

第2作業部会報告書表紙

第3作業部会報告書表紙

気候変動に対応してゆく車の両輪 =(緩和)+(適応

ますます重要な意味をもって来たのが「緩和と適応」という考え方です。
緩和」と「適応」とは、およそ、次のような意味で用いられます。
 *緩和:温室効果ガスの排出削減と吸収の対策を行うこと。
 *適応:気候変動の影響による損害を防止・軽減したり、新しい気候条件を活かしていったりすること。

環境省の資料ではこんなふうに説明されています。

環境省 IPCC第5次評価報告書の概要‐第2作業部会(PDF)‐p.74

(注)

今回の文章を書くにあたって、「緩和」と「適応」に関した内容を書かなくてはならないことは分かっていたのですが、どこから、どのように手をつけていったら良いものか、随分迷いました。

先ず、「緩和」と「適応」。あまり耳にしない言葉です。
この言葉を正確に理解し、なるべく分かりやすくお伝えするにはどんなふうに表現したらよいのだろうか?・・・ということがありました。

IPCCの文書は、世界各国の政策を決めるための前提となるもの。
使われている「言葉」は、実に厳密で慎重です。
全体のキーとなる専門用語は、特に正確に定義づけられています。
(「緩和」と「適応」もそうしたキーワードの一つです。)
しかも、私達が読む文書は、英文で書かれた物を、官庁が(半年もかけて)和訳した物。
英文の意味する内容を、適した日本語に置き換える作業は、とても難しいものです。
ですから、素人には、1回や2回読んだだけでは、さっぱり分からないのです。

たとえば、「適応」という言葉を子供の国語辞典でしらべると、「うまく当てはまること」(旺文社)とありますが、IPCC・第2作業部会の報告文書では、次のように定義づけられているのです。

適応:
人間社会にて、現実/予測される気候及びその影響に対して、損害を和らげ、回避し、または有益な機会を活かそうとする調整の過程。いくつかの自然システムにおいては、人間の介入は予測される気候に対する調整を促進する可能性がある。

(IPCC・第5次評価報告書・第2作業部会報告書・・・環境省HPより)

今回の文章は、何冊かの専門書やネット情報を調べた上で、なるべく分かりやすく、且つ、なるべく正確に書いたつもりですが、こうした事情をご理解頂ければ幸いです。

適応」は、21世紀になって以降、その重要性が強調されてきた課題です。
気候変動の及ぼす影響の深刻さが、認識されてきたからです。

1995年IPCC報告書には、気候変動の全体的な影響について、明確な記載はありませんでした。
ところが、2001年には、
気温の上昇」が、「多くの物理・生物システムに対して影響を及ぼしている」と記載され、
今回の2014年統合報告書では、
ここ数十年で、すべての大陸と海洋において、気候の変化が自然及び人間システムに対して影響を引き起こしている」と、明言されるに至ったのです。

気候変動がもたらす影響に対し、その損害を防止したり、軽減したりするなどの対応が必要になっているのです。こうした対応が「適応」です。
CO2削減だけでなく、現実に起きている気候変動の脅威にも、地球的な規模で「適応」してゆくことが強調されているのです。

しかし、その対応方法は、その地域や分野によって異なります。
たとえば、「2月の北海道の豪雪」と「適応」の関係を考えてみましょう。

2月の北海道中心の記録的な豪雪も、「温暖化」が主要因だろうと考えられています。
北極海域の海氷が融けてきたことで、極域の温暖化が進んでいます。
極域の温暖化で、それまで北極海の上にまとまっていた寒気が分断され、
東アジアと北アメリカに南下してきたと言われています。
ですから、北海道だけでなく、アメリカでも記録的な豪雪に見舞われているのです。

今回の豪雪が「温暖化」によるものであれば、
これから先も、長期にわたってこうした傾向が続くのかもしれません。
数十年に1回程度の「異常気象」としてではないのですから、
一時凌ぎではない対応が求められるのです。

このような豪雪への対応も適応の一例です。

気候変動の影響を科学的に把握して、
その地域にある「脆弱性」(例えば高齢者が多くて地域社会だけでは対応できない、というような傾向)も含めた根本的な対策が求められていく時代に入ったのです。

(注)「脆弱性」もキーワードの一つで、次のような定義で用いられています。
悪影響を受ける性向あるいは要因。脆弱性は被害への敏感さ、あるいは感受性、及び対処し適応する能力の欠如を含む様々な概念と要素を網羅している。(環境省HPより)

緩和」と「適応」の関係の正しい関係

では、適応に力を入れれば、緩和は若干でもテンポダウンできるのでしょうか?

それは、違います。
昨年11月に公表された統合報告書には、次のような文言があります。(太字・下線は筆者による)

現行を上回る追加的な緩和努力がないと、
たとえ適応があったとしても、21世紀末までの温暖化は、深刻で広範にわたる不可逆的な世界規模の影響に至るリスクが、高いレベルから非常に高いレベルに達するだろう。

緩和はあるレベルの共同便益や負の副次効果によるリスクを伴うが、
これらのリスクは、気候変動による深刻で広範にわたる不可逆的な影響と同程度のリスクの可能性を伴うものではなく、近い将来の緩和努力による便益を増加させる。

統合報告書の公表について」(PDF)p.2

今、十分な緩和策が採られないまま推移すれば、将来の気候変動の影響は増大します。
そうすると、その気候変動の影響は、自然や人間のシステムの対応能力を超えてしまうのです。
いわゆる「お手上げ」状態。
そうなれば、どんなに適応策をとっても対応しきれないリスクが生じてしまうのです。
(「リスク」という言葉も定義づけされていますが、私達が日常使う「リスク」という意味で理解しても支障ないと思えます)

しかし、今、緩和努力を尽くせば、いくらかのリスクは生じても、
そのリスクより、緩和努力によって生じるメリットの方が大きいのです。
この両者の関係の正しい理解が大切です。

こうした理解に立って、以降の連載を続けていきたいと思います。

(文責 副理事長・吉田雅人)

 
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